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【報告】「船の体育館」のいままでとこれから―再現計画から再生計画―

2021年9月8日(水)に日本大学名誉教授の斎藤公男(さいとうまさお)先生にお招きしていただき、ZOOMとYouTubeを活用した講演会をいたしました。(動画:約2時間15分)

斎藤公男先生は国立代々木屋内競技場の構造設計をされた坪井善勝さんの元で構造を学ばれた方で、過去に日本建築学会の会長もされていた、日本を代表する構造家です。

今回の講演会は、先生が代表を努めている「A-Forum」にて今後継続して行われる「空間  構造  デザイン研究会」の特別企画として行われたもので、丹下健三が設計した「旧香川県立体育館」の今後について、全国的に注目されていることもあり、建築の構造系の講演会として珍しく先着90名のZOOMでの参加者は定員いっぱいとなりました。

上記のYouTubeにて様子をご覧になれます。

ー以下講演概要ー

モデレーター

斎藤公男(A-Forum) 

パネリスト

「経緯と方向性」名和研二(なわけんジム

「保存運動に向けての状況」河西範幸( 船の体育館 再生の会

「構造計算書から読み解く」田中正史(武蔵野大学)


建築構造を主とした講演会ですが、単に構造だけの話しにとどまらず、まだ先行きが不透明な旧香川県立体育館について、建設的な議論がなされました。

はじめに斎藤先生から今日のこの会が行われるに至った経緯と旧香川県立体育館がどの様な位置づけの建築物なのかを国立代々木屋内競技場や、ご自身で設計された岩手県営体育館の模型写真などを使い説明されました。

画像をクリックするとYouTubeで動画がはじまります。

構造家の名和研二さんからは、旧香川県立体育館など歴史的な建物を将来へ引き継ぐ時に生じる問題点と再生を行う時にクリアしなければならない点を整理し説明されました。

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船の体育館再生の会代表の河西範幸は、建物の概要、閉館に至るまでの経緯、今までに行ってきた活動の報告を行い。そして再生へ向けた再生計画の発表を行いました。再生計画案は建築構造の専門家の協力の元、修復が困難な既存の屋根を取り払い、エクストリームスポーツ施設へ用途を変更する大胆な計画を提示しました。現在、香川県ではサウンディング型市場調査を行っており、参加される民間事業者への用途変更のアイデア出しの参考となるものになっています。

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武蔵野大学 田中正史先生からは、旧香川県立体育館の構造設計をした構造家 岡本剛(おかもとたけし)が、どの様な作品を作ってきたのか、そして複雑な形状をしている旧香川県立体育館をどの様に構造設計をしたのかを解説されました。後半では既存の屋根を取り払った時の建物に与える影響をわかりやすく説明されました。

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発表後行われた、ZOOMでの意見交換では大手ゼネコンの内部の方、大学の先生、組織設計事務所の方、書籍の編集をされている方などから、率直なそして非常に貴重なご意見をたくさん頂きました。

画像をクリックするとYouTubeで動画がはじまります。

今回の会をきっかけに再生への機運が高まる事を期待せずには居られない講演会でした。

香川県 旧香川県立体育館サウンディング型市場調査

空間 構造 デザイン研究会 ・特別企画
「船の体育館」のいままでとこれから
―再現計画から再生計画―

現在、旧香川県立体育館は香川県によりサウンディング型市場調査が行われております。それとは関係なく私達はずいぶん前から船の体育館(旧香川県立体育館)が、どの様な再生方法があるのかを構造家の名和研二さんに構造の監修をお願いし、検討をし続けています。

今回その途中報告として、構造家の斎藤公男先生が主宰されているAフォーラムにて、WEB講演会を行います。
 
行く先が分からない、この建築物の新たな船出を指し示すような話しとなる予定ですので、ご興味のある人は是非ご視聴ください。
 
 
—-講演会概要—-
有名建築のひとつである
「旧香川県立体育館」(1964年,意匠︓丹下健三,構造︓岡本剛)
レガシーとしての今後の展開について提案と議論を行いたいと考え企画しました。皆様のご参加をお待ちしております。
 
日時︓2021年9月8日(水) 15:00~17:00

会場︓YouTubeライブ配信
 
モデレーター︓斎藤公男(A-Forum)
パネリスト︓
「経緯と方向性」
  名和研二(なわけんジム)
「保存運動に向けての状況」
  河西範幸(一般社団法人 船の体育館 再生の会)
「構造計算書から読み解く」
  田中正史(武蔵野大学)
意見交換︓ 30分

まちかど漫遊帖2017秋「船の体育館を知ろう!」

「昭和の名建築、船の体育館を知ろう!」
香川県民に舟形の体育館として親しまれていた香川県立体育館は、残念ながら2014年の9月30日で閉館となりました。香川県庁舎に次ぐ香川県を代表する名建築が出来た経緯、そして何故あの様な形状になったのかなど、実際の建物を見学しながら深く知って欲しいと考えています。
また、希望者のみガイドツアー終了後、北浜アリー(徒歩15分)まで歩きキッシュ専門店「206(ツマム)」にてお茶します。

開催日:11月12日(日)13:45時から
集合場所:ことでん今橋駅
金額:500円(料金は保険料含む)
所要時間:1時間30分

申し込みフォーム&詳細
https://goo.gl/nsnDR1

まち歩き「昭和の名建築、舟形体育館のことを知ろう!」


「昭和の名建築、舟形体育館のことを知ろう!」
香川県民に舟形の体育館として親しまれていた香川県立体育館は、残念ながら2014年の9月30日で閉館となりました。香川県庁舎に次ぐ香川県を代表する名建築が出来た経緯、そして何故あの様な形状になったのかなど、実際の建物を見学しながら深く知って欲しいと考えています。
また、希望者のみガイドツアー終了後、近所のパテシエyamaにてお茶します。
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開催日:4月23日(日)13:45時から
集合場所:ことでん今橋駅
金額:500円(料金は保険料含む)
所要時間:1時間30分
定員:20人

申し込みフォーム
https://goo.gl/fQKjAc

Q&A

■香川県立体育館 保存の会について
Q
香川県立体育館 保存の会はどの様なメンバー構成で活動されているのか?建築関係主動の活動ではないのか?
A
主に記事を書いている代表は建築家ですが、メンバーは建築家、写真家、美術家、インテリアコーディネーター、作家、編集者、webデザイナー、公務員、主婦など多種多様な職業の方が運営に携わっています。メンバーの多くは体育館で過ごした特別な思い出を持っています。
また、香川県立体育館 保存の会のFacebookページに「いいね!」をされている方は約2700人おられますので、私たちの活動は一部の建築関係者だけでなく多くの一般の方に支持されている活動であると思います。
建築物の問題ということで、香川県建築士会、日本建築家協会香川地域会、日本建築学会四国支部とは、それぞれの思惑がありますが協力的な関係を構築しながら活動を行っています。
Q
「なんの提案もなく、ただ残せ」というのはどうことなのでしょうか?
A
署名活動強化月間中なのでその様に誤解されているのかも分かりませんが「何の提案もなく、ただ残せ」とは言ってはいないです。署名活動の趣旨文の香川県への要望3項でも書いているように「3.利用者となる県民の意見を広く聴き、細やかな情報開示をした上で、長期的視点に立ち利活用方針を決定すること。」という、民主的な方法で今後の建物の利活用方法を選択する事が必要であると考えています。また、今後の活用方法についてのアンケートで解体も含めた色々な活用方法の選択肢を用意していることからも判るように、絶対現状維持で保存すべきと決めつけずに、用途変更や形状の変更も視野に入れて、多くの人が納得する形で建物が残せる方法をみなさんと一緒に考えて行きたいと思っています。
※1.
「電子署名」香川県立体育館を壊さないで。

※2.
今後の運用についてのアンケート

Q
建物の保存を呼びかけるのであれば、耐震改修費用を集める努力をしないのは何故か?
A
寄付についてですが、まずは取り壊しという判断をされない事を第一に考えています。多くの署名が集まって存続が決定したらするかもしれませんが、存続すら不透明な現段階で行う予定はないです。
Q
ここまで保存活動をするのは丹下健三事務所と特別な関係でもあるのか?
A
丹下都市建築事務所からの図面や資金の提供などは一切受けておりません。
実際、建設当時の図面や耐震改修が不調となった耐震改修計画の図面の提供をお願いしたことがありますが、契約者である香川県との守秘義務違反となるとの事で断られております。
Q
国宝や重要文化財に認定されるように国へ働き掛けを行わないのはなぜか?
A
現在、戦後に建てられた近代建築の中で国の重要文化財に指定されているのは「国立西洋美術館本館(1959年竣工。設計:ル・コルビュジエ)」「世界平和記念聖堂(1954年竣工。設計:村野藤吾)」「日土小学校(1956年、58年竣工。設計:松村正恒)」「広島平和記念資料館(1955年竣工。設計:丹下健三)」の4つしかありません。
重要文化財に指定されれば、国から改修費用などが出るのだと思いますが、現段階で重要文化財に指定されれば基本的に体育館としての現状維持を最優先とされるので他の用途への用途変更などは行うことが出来なくなると思います。また丹下健三の最高傑作の国立代々木競技場がまだ重要文化財と指定されていないため、プロトタイプである香川県立体育館が、先に指定される事はまず考えられません。
香川県立体育館は数十年先に重要文化財として指定される可能性がある建物だとは思いますが、重要文化財の認定をするのは文部科学省で、本来ならば建築主である香川県が、日本建築学会やDOCOMOMOなどの学術組織や大学などが研究調査をした上で申請をするのが通常のプロセスです。その過程で私たちが協力する事は出来ますが、その様な権限のある団体でないというのをご了承頂ければと思います。
—————————————
■コストについて
Q
10億ちょっとで計上されている改修予算というのは、「体育館としての利用」のための予算なのでしょうか?
A
体育館として利用し続けるための耐震改修工事費と聞いています。
Q
それとも用途がなんであれ、そのくらいの費用が必要だということでしょうか?
A
現状体育館ですので、用途変更に関わる設備の追加工事などがあれば、用途によるとは思いますが普通に考えると更にコストは掛かると思います。「耐震改修工事費」+「用途変更に関わる設備」になると思います。
Q
15億程度にまで膨らむ可能性について報道されていますが?
A
今のような東京オリンピックと東日本大震災の復興という日本全体で建築需要がすごく高い状況で入札をすると、15億程度にまで膨らむ可能性があると思います。しかしながら、ずっと需要が高い水準を保つとは考えにくく、オリンピックまで待てば価格は下がってくると予測しています。
Q
維持費としてどれくらいかかるのでしょうか?
A
現状の体育館は閉館されていますから、現状のままですと防犯上の監理コストだけだと思います。
Q
用途を変更することで改修費・維持費を下げられるのでしょうか?
A
先に書いたように用途変更では建築コストを下げる方向よりも上がる方向のベクトルと思います。用途変更で期待したいのは経済的な波及効果で建築コストを回収できるのか?が問題だと思っています。
Q
体育館としての閉鎖が決定している以上、文化財として現在の予算より低コストで改修・維持できるのか知りたいと思います。
A
用途変更でコストが上る可能性が高いと書きましたが、外観と内部が大きく変わるので出来れば維持してほしいのですが、屋根を「吊り屋根構造」という特殊な形式を諦めれば、コストが下がる可能性がありますし、選択できる用途も多くなると思います。また、吊り屋根構造を維持しても用途が体育館より耐震基準のゆるい用途に変更するのであれば耐震改修に関わるコストは下がるとは思います。
※1
閉館までの経緯

※2
お金のこと

—————————————
■現在の建物について
Q
技術的に耐震化できないのでは?
A
入札不調となった耐震計画がある以上、技術的には耐震化は可能であるという事だと思います。
先に述べましたように、体育館としての用途での話ですから、もし他の用途となる場合は必ずしも同じ耐震計画でいけるとは言い切れませんが、用途を変えて耐震化をすることは可能であると思います。
Q
バレーボールやバドミントンなどの公式試合が開催できないことを知っているか?
A
香川県立体育館が建設されてから現在に至るまでの間に競技のルールが変更されて、現行の公式試合が行えない天井の高さである事は承知しております。
Q
耐震改修がされておらず、危険な建物だと思うが見学会などをして大丈夫か?
A
以前に香川県教育委員会保健体育課の許可のもと、耐震診断の報告書を拝見させて頂いたのですが、安全とされる耐震指標(Is値)が0.6のところが香川県立体育館は0.54であり、過去の地震被害の統計から大地震時においては中破の破壊となる事が予想されます。中破というのは柱や耐力壁にひび割れが起こるということであり、柱や梁が座屈して人命の危険が起こるような事はないという感じです。ちなみに熊本地震で破壊された宇土市庁舎のIs値は0.3程度であったようです。香川県立体育館は柱や梁などの1次部材の崩壊の危険性ではなく、アリーナの天井板という2次部材の落下の危険性があり改修工事が必要と判断されています。また、体育館という用途上、近隣の避難場所と指定されているため構造計算上の安全率が1.25倍割増で計算されていることも、耐震改修費が増えた要因になっていると思います。ですから、アリーナ以外の室内及び外部に関しての人命に関わる危険性は、ガラスが割れて頭に当たり大量出血する事などもありえますから、完全に無いとは言い切れませんが、それは普通の建築物でもある危険性であり危険だから敷地内に入ってはならないという判断にはならないと思います。
※1
耐震指標について