Q
建物の保存を呼びかけるのであれば、耐震改修費用を集める努力をしないのは何故か?
A
寄付についてですが、まずは取り壊しという判断をされない事を第一に考えています。多くの署名が集まって存続が決定したらするかもしれませんが、存続すら不透明な現段階で行う予定はないです。
Q
ここまで保存活動をするのは丹下健三事務所と特別な関係でもあるのか?
A
丹下都市建築事務所からの図面や資金の提供などは一切受けておりません。
実際、建設当時の図面や耐震改修が不調となった耐震改修計画の図面の提供をお願いしたことがありますが、契約者である香川県との守秘義務違反となるとの事で断られております。
Q
国宝や重要文化財に認定されるように国へ働き掛けを行わないのはなぜか?
A
現在、戦後に建てられた近代建築の中で国の重要文化財に指定されているのは「国立西洋美術館本館(1959年竣工。設計:ル・コルビュジエ)」「世界平和記念聖堂(1954年竣工。設計:村野藤吾)」「日土小学校(1956年、58年竣工。設計:松村正恒)」「広島平和記念資料館(1955年竣工。設計:丹下健三)」の4つしかありません。
重要文化財に指定されれば、国から改修費用などが出るのだと思いますが、現段階で重要文化財に指定されれば基本的に体育館としての現状維持を最優先とされるので他の用途への用途変更などは行うことが出来なくなると思います。また丹下健三の最高傑作の国立代々木競技場がまだ重要文化財と指定されていないため、プロトタイプである香川県立体育館が、先に指定される事はまず考えられません。
香川県立体育館は数十年先に重要文化財として指定される可能性がある建物だとは思いますが、重要文化財の認定をするのは文部科学省で、本来ならば建築主である香川県が、日本建築学会やDOCOMOMOなどの学術組織や大学などが研究調査をした上で申請をするのが通常のプロセスです。その過程で私たちが協力する事は出来ますが、その様な権限のある団体でないというのをご了承頂ければと思います。
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■コストについて
Q
10億ちょっとで計上されている改修予算というのは、「体育館としての利用」のための予算なのでしょうか?
A
体育館として利用し続けるための耐震改修工事費と聞いています。
Q
それとも用途がなんであれ、そのくらいの費用が必要だということでしょうか?
A
現状体育館ですので、用途変更に関わる設備の追加工事などがあれば、用途によるとは思いますが普通に考えると更にコストは掛かると思います。「耐震改修工事費」+「用途変更に関わる設備」になると思います。
Q
15億程度にまで膨らむ可能性について報道されていますが?
A
今のような東京オリンピックと東日本大震災の復興という日本全体で建築需要がすごく高い状況で入札をすると、15億程度にまで膨らむ可能性があると思います。しかしながら、ずっと需要が高い水準を保つとは考えにくく、オリンピックまで待てば価格は下がってくると予測しています。
Q
維持費としてどれくらいかかるのでしょうか?
A
現状の体育館は閉館されていますから、現状のままですと防犯上の監理コストだけだと思います。
Q
用途を変更することで改修費・維持費を下げられるのでしょうか?
A
先に書いたように用途変更では建築コストを下げる方向よりも上がる方向のベクトルと思います。用途変更で期待したいのは経済的な波及効果で建築コストを回収できるのか?が問題だと思っています。
Q
体育館としての閉鎖が決定している以上、文化財として現在の予算より低コストで改修・維持できるのか知りたいと思います。
A
用途変更でコストが上る可能性が高いと書きましたが、外観と内部が大きく変わるので出来れば維持してほしいのですが、屋根を「吊り屋根構造」という特殊な形式を諦めれば、コストが下がる可能性がありますし、選択できる用途も多くなると思います。また、吊り屋根構造を維持しても用途が体育館より耐震基準のゆるい用途に変更するのであれば耐震改修に関わるコストは下がるとは思います。
※1 閉館までの経緯