一社)香川県建築士会 平成27年度 設計競技
「香川県立体育館のリノベーションの可能性」
※当コンペはアイデアであり、現実に県立体育館が存続する事とは関係ありません。
”瀬戸内建築アーカイブズ(博物館への改修)”
香川県立体育館の人類的価値と言える「吊り屋根構造が生み出す重力から逃れたような空間」を前提に今後のあり方の可能性を考える。この空間・形態を尊重しつつ、よく断面図を見てみると、印象的なワッフル状の格子梁に異様に薄いスラブが張り付いていることに気がついた。このスラブは、重力から逃れた空間を表現しながら、体育館としての機能面でも重要な要素となっている。しかし同時に内外を断絶し、アリーナを閉ざしてしまっている、そこで思い切って、このスラブを取り払ってみる。すると、アリーナと両側に反り上がる客席が生む動的な空間が、反り上がる格子梁の間からあふれでる光とそれを眺める床という静的な空間へと様相を変えた。またこの「瀬戸内のゆか」は光だけでなく、自然な空気の移動も促す。香川県立体育館が有していた構築物としての人類的な価値をより顕在させる操作を施設の可能性として提案したい。
ひとつの可能性として「瀬戸内建築アーカイブズ」
この空間でおこなう営みとして「瀬戸内建築アーカイブズ」を提案したい。瀬戸内につくられてきた建築を今現在の瀬戸内を形成する重要な要素と位置づけ、それに関わる様々な資料を収蔵・閲覧・継承していくものである。
瀬戸内地域には【瀬戸内海歴史民俗資料館】(香川)、【八幡浜市立日土小学校】(愛媛)、【大原美術館】(岡山)などをはじめとして、地域固有の伝統と風土に根を下ろした近現代建築が作られている。
これらをとりまく多様な資料-図面や建築家のスケッチ、模型等の資料のアーカイブを通して、時には振り返り、時には議論し、これからのことを考えるための場としたい。
”水盤からの反射光を利用するため、西側外部に池を増設している。既存の開放的なエントランスホールを活かしカフェ・レストランとして、その他の部屋は研究室やWSスペースとして利用している。”
”アリーナだった部分に書架や陳列棚を設置し、瀬戸内に建てられた建築たちのスケッチ、図面、模型を常設展示し、多くの人の目に触れるかたちで資料を収蔵、継承していく。また、収蔵した資料を元に瀬戸内の風土に合う建物とはどの様なものなのかを語り合う議論の場としている。”
”カフェ・レストランには元からあった剣持勇の家具だけではなく、香川県に縁のある流政之、イサム・ノグチなどの彫刻作品も展示”
【香川県建築士会からのコメント】
瀬戸内には固有の伝統・風土に根差した近現代建築が造られている・これらに係わる資料、図面、模型などを収蔵展示し、これらを通して、時には振り返り、また議論する場としたい。提案の特徴としては西側のかんらんせきを支える格子状のはりを残し、スラブを撤去、そこには透過性・開放性のある装置を設け、格子梁の下にはいけを設け、時には池に反射する光を、また時には風をとりこみ自然と調和した施設としてよみがえるなどの工夫がある。