佐賀にある市村記念体育館は、RICOHの創業者である市村清により佐賀県に寄贈された建物。香川県立体育館の建つ前年の1963年に佐賀県体育館として完成した。設計はフランスのル・コルビュジエの元で建築を学んだ坂倉準三によるもので、構造設計は香川県立体育館と同じ岡本剛(おかもとたけし)が努めた。外観は楕円をジグザグにしたような特徴的な外観をしているが、屋根は香川県立体育館と同じ吊り屋根構造で内部の空間はよく似ている。
開館から50年以上たち体育館としてフロアの面積が小さく競技会などの開催が難しくなってきたことから、スポーツ施設としての使用を終了する方針が示された。2019年に次世代を担う人材育成や文化芸術拠点として改装する方針であることが示された。これは2018年に行われた「肥前さが幕末維新博覧会」のメインパビリオンとして同建物が使われ、その志を引き継ぐ施設として、そして文化的な活動が出来る施設として生まれ変わらせるという内容である。
その後2021年に「市村記念体育館利活用設計業務委託」の公募型プロポーザルが行われ、設計者としてOpenA+石橋事務所JVが選定され文化芸術の創造活動拠点として2025年完成を目指して現在設計中である。佐賀県は概算事業費として35.5億円を国の補助金も利用し捻出する計画としている。
近隣にある図書館、こころざしのもりと連携することで、文化の体験・創造の役割を強化し、県民にとってわかりやすく使いやすい拠点を形成するとしている。
香川県よりも人口が少なく経済規模の小さい佐賀県の市村記念体育館の利活用についての事例は、同規模同構造の船の体育館(香川県立体育館)の今後について議論を深める上で貴重な参考事例となると思う。
我々だけでなく香川県や船の体育館のことを思ってくれている人たちも、市村記念体育館の利活用について継続して学ぶことが大切である。そうすることで船の体育館の再生に道筋が見えてくれればと思う。